羊が４３匹 ページ44
キーンコーンカーンコーン……
もはや聞き慣れてしまったそれを聞いて私は鞄を持って“いつもの教室”へ行く。
最近まではその鐘の音を聞くのが辛かった。
だって、鳴ってしまえばいくつもの鋭い視線が私を貫いていく。
その感覚は何度体験しても気持ち悪くなる。
でも最近はその視線は少なくなった気がする。
まぁ、視線が私を貫いていくのは変わらないのだけど。
死期が分かったから開放されるって、嬉しかったのかもしれない。
……いや、彼らに会って、私は心に余裕が出来たのかもしれない。
そんなことを考えていると最近昼食を取っている空き教室に着いていた。
窓側から二番目の一番後ろ。
程よく日差しの当たるその席に座り弁当箱を開ける。
最近は母の手作りの弁当が増えた気がする。
そのためか、ここ最近は自分で料理をしていない気がする。
でも、お金だけを渡されていた今までの生活とはまるで違う。今の生活は温かすぎる。
手放すのは惜しいと思ってしまう。
もぐもぐとお弁当を噛み締めていると、ガンッと勢いよく扉が開いた。
「A〜！！！！」
そう言いながら飛んでくる緑の物体……もといゾム。
こいつはいい加減静かに扉を開けるってことを学んだほうが良いと思う。
「あ、もう飯食ってるやん！！」
はやぁ……そう言ってしょぼんとするゾムを見ているとこいつはうさぎか？と思う。
犬ではない。うさぎだ。
うさぎは構ってくれないと死んでしまうらしい。だから構ってもらうのが大好きなこいつはうさぎが似合う。
「ゾ、ゾムぅ！！はぁ、はぁ……お前ええ加減にせえや！！扉くらい静かに開けんかい！！」
そう言いながら次にやってきたのは鬱。
「えぇ……扉があるのが悪いやん」
「どこでも扉くらいあるやろ！！てか生徒会が廊下走んなって」
とは言っているが息切れしている鬱も鬱でゾムを追いかけて走っていたのだろう。
「そういう大先生やって廊下走ってたやん！！ブーメランやで」
「はぁ！？元はと言えばゾムが走ったのが悪いんやろ！？」
何度目分からない喧嘩を聞いて思わず笑ってしまった。
「「……」」
すると先程まで喧嘩していた二人がいきなり静かになった。
「いや、いきなり静かにならないでよ」
気まずいだろ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 891人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚子。(プロフ) - うぃるそんさん» ありがとうございます！！！！頑張ります！！ (4月27日 22時) (
レス) id: e4888bfbe3 (このIDを非表示/違反報告)
うぃるそん - あー！！本当に大好きすぎます！これからも頑張ってください！！ (4月22日 23時) (レス) id: 4b19bdf32e (このIDを非表示/違反報告)
柚子。(プロフ) - ーーーさん» えへへ、ありがとうございます！！ (3月7日 20時) (レス) id: e5709cfba7 (このIDを非表示/違反報告)
ーーー - 好き······ (3月7日 18時) (レス) @page47 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
むぎちゃ - 大好きです！（突然の告白）頑張ってください！ (10月12日 16時) (レス) id: bf3237f3d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚子。 | 作成日時：2022年10月8日 9時
