【d!】ちゃうんですって!!!! (ページ5)

今日:70 hit、昨日:35 hit、合計:2,748 hit

◇ ページ5

無遠慮に、豪快に扉を開け放つ。と同時に扉の裏からひしゃげたような鈍い音と悲鳴が上がったが、彼らは気にも留めず呆然とその場で立ち竦んだ。自分だけが其の場で置いてけぼりにされたような錯覚が喉を枯れされる。
視界を埋め尽くすのは暖色ばかりで、ホワホワとしたまろい雰囲気に包まれた其の場所は「世界を反転させた」などと宣っても信じてしまいそうな異様さを醸し出していた。

以前訪れた際は机に広げられていたノートパソコンやコンシューマハードは適当な場所に仕舞われ、普段端に寄せられている薄橙色のパイプ椅子が中央にある横に連結した二つの長机を挟んで列になるよう並べられている。少しでも熱気を抑えようという名目で連日連夜閉じられていたカーテンは端に纏められており、普段は見る影も無い窓からは澄んだ青が此方の様子を伺っている。
けれど相違点なんてものはそれだけで。

異様さを顕著にしているのはそこから降り注がれる柔らかな陽光である。全てを優しく包み込む羽毛のようなソレは無機質な部室に呼吸を、鼓動を齎している。
けれども矢張り無機質で、生気のない不完全な一室は微睡みのようだった。
そんな雰囲気にあてられたのか、希の視界には奇抜な服装の友人たち(のような人物)が己に向かって手を振っていて＿＿＿＿

ハッと幾度か瞬きを繰り返す。目の前にいた影は既に無く、明瞭になった世界は矢張り暖かかった。
こくり、喉仏を上下させる。

「……あれ、オレら部屋間違えた？」

「あってるんだよなぁ」

準備室の扉が開くと同時に答えたのはカーキー色のジャージを着た黒髪の男であった。彼は苦笑いを浮かべながら両手いっぱいに持った書類を抱え直し、やがて席ごとに並べ始めた。表紙から察するに部活動に関する冊子のようだ。
紅玉のような眼をへにゃりと細めながら歩み寄る彼の名は頓宮(トングウ)健人(ケント)。
前世にてグルッペンを筆頭とした仲間と共に革命の凱歌を上げ、総統の座についた彼を右腕として支え続けたトントンの今世の姿である。

───────────────────────

頓宮健人/トントン

[概要]
私立茶山高等学校ゲーム部の部員。子豚を飼っているらしい。
前世ではd国軍のトンつく隊隊長兼書記長で、「«検閲済み»」と謳われていた。
本編時空では茶山高校2年B組。得意科目は理科と数学。苦手科目は特になし。