【d!】乙女ゲーム症候群 (ページ2)

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新緑が芽吹きだした、五月上旬。咲き誇っていた桜も散り、今はツツジが咲いている。

春の日差しに照らされる窓辺の席で、私は心穏やかに本をy「姫がそんなことするわけないやろ!!」
　
……私は心穏やk「叶が嘘ついてるって言うんか!?」

……私h「酷いよぉ、叶ちゃん……」

……わt「う、嘘なんてついてないよ！！」

うるさい、もの凄くうるさい。
開いていた本を閉じ、騒ぎの中心を見る。

そこには四人の人間。
広井叶、甘井姫、捏島(こねしま)孝行(たかゆき)、黄瀬(きぜ)詩音(しおん)。

全員生徒会所属で、このクラスの人間。

話を聞くに、広井が甘井に何かをしたのか。

ただの喧嘩ならどうでもいい。ただ広井と甘井が絡んでるとなると話が違う。

「乙女ゲーム症候群」
これが関係している可能性があるなら。

興味があるのはあくまで患者の思考、そして行動。

患者に付き纏う王子様……ではないな、生徒会の人間には対して興味がない。

生徒会の奴らがどのように思考が変動していくかは興味があるが、第一優先は患者である。

『今回は何で言い争いしているんですか？』

私は隣の席の人に聞いてみた。

「えっ?あ……広井が甘井さんを睨んだらしいです」

相変わらず私が話かけると、この調子なのか。

茂上優。

患者の一人として友好関係は築いておきたいのだが、私を警戒しているようだ。

まったく、私は興味があるものには危害を加えないのに。

『でも茂上さんって生徒会と仲良いですよね？』
『止めなくていいんですか？』

「か、勝手に止まるんじゃないですか?」

止める気はない、と。

広井と甘井に関わりたくないか、生徒会と関わりたくないか。おそらく前者だな。

広井たちを見ると、患者より生徒会の方が言い争っている。

捏島が広井側、黄瀬が甘井側。どっちも犬みたいにキャンキャン騒がしいのに、思考は分かれたのか。

このままじゃ埒が明かない。

「誰か先生呼んできたら……?」

教室がざわつきだした。生徒会という学校の代表が喧嘩なんてしてたら、そうなるか。

「まぁまぁ、シッマもシャオちゃんも落ち着き」

そう言って教室に入ってきたのは。
腐れ縁で私が一番嫌いな人間。

鬱宮(うつみや) 大(だい)だった。