┗荷解き ページ2
それから職員寮に着いた。
「すごい所。学生寮とちょっと雰囲気違う気がする」
「生徒の寮もいいところだったけど……そうだね」
わたしの呟きにミオソティス先生も頷いた。
職員寮は灰色のおしゃれな広めの建物だ。正門近くにあるから生徒だった頃も見かけていたので、今更珍しいとは思わない。
だが、直接ここに入るのは初めてなのでとても不思議な気持ちだ。
玄関から入り、廊下を通る。会議室や共有キッチン、ラウンジのようなものまであって、構造は生徒の寮と似たものだと分かった。
「なんだ、新人か?」
ラウンジ通りかかったところで、コーヒーを飲んでいる先生に出会う。彼はグラナート・ダーリアと名乗った。飛行術の先生だそうだ。
自分もだけど、若い先生だった。自身が生徒だった頃の先生はもういないのかもしれない、と思うとなんだか少し寂しくなる。
軽く挨拶をしてわたしとミオソティス先生は2階に上がる。
そして自身の部屋へそれぞれ向かった。
×
「ひろーい。そりゃそうか。先生用の部屋だし」
部屋には事前に運び込まれていた荷物が置いてある。
ベッドやクローゼットなど、いくつかの家具は備え付けだからすぐにでもこの部屋で暮らすことはできそうだ。
「とりあえず、荷物を開けなきゃ」
呟いて周囲を見回す。とても殺風景な部屋だ。カーテンもシンプルで、そのままでもいいけど何か買うのも良いかもしれない。
「複数召喚・ラビーズ」
右手中指の“契約の指輪”が少し光って、二足歩行の猫のような生き物達が現れる。少し耳が長くて兎みたいな雰囲気もあるけど、多分猫妖精(ケット・シー)だと思う。
契約した時に分かんなかったから『ラビーズ』って呼んでそれで定着しちゃったんだよね……まあ今更か。
この子達を喚んだのは荷解きの手伝いしてもらうためだ。
「服はそっち、教材はあっち」
箱を抱えてラビーズ達が部屋を駆け回る。
「……そういえば、最初に会った先生変な人だったな」
ふと、ヘッケンローゼ先生のことを思い出した。
「多分、見るからに年上の先生なんだよね」
真っ黒い髪に黒い服の、仮面を付けた先生。それに、凄く背が高かった。
「うん、すっごい怪しい」
さっきも思ったけど。仮面のことが気になって授業に集中できないよ多分。
「だけど、すごく髪がさらさらだったな……あとちょっと良い匂いした」
香水じゃなくて、煙っぽい匂いだったけど。
「はっ、荷解きしなきゃ」
そうしているうちに引越し準備が終わった。
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作者名:鬼灯 | 作成日時:2024年4月10日 14時